新種 Nitidotellina hachiensis ハチザクラを記載する。この種は殻表の後背部に走る一対の稜角や後端が明瞭に凹む点が著しい特徴で, これらは同属の他種では類例が知られていない。本種の現生個体は瀬戸内海 (岡山・広島・山口・愛媛各県) のみで得られ, 更新統千葉階豊橋層の化石が愛知県でのみ報告されている。生貝は主に干潮線から潮下帯にかけての砂泥底から見出されるが, 寡産である。産出は大規模な湾奥に限られ, 近年の内湾の水質汚濁などを原因とする棲息環境の喪失により, 絶滅が危惧される稀少種と見做しうる。